B型肝炎の検査と治療・ワクチン
B型肝炎の検査方法、治療方法、予防するためのワクチンについての解説です。
抗原検査
血液検査だよ
B型肝炎ウイルス(HBV)の検査は、血液検査で行われます。
血液中にHBs抗原が存在しているかどうかを調べます。
HBs抗原が陽性であれば、HBVに感染していることを示しています。
- 感染初期(感染後2~6ヶ月)
- キャリア(感染後6ヶ月~)
この検査で陽性の場合は、感染初期もしくはキャリアのどちらかであると考えられます。
感染初期
大人がHBVに感染する場合は、主に性行為で感染します。
感染すると2~3ヶ月くらいでHBs抗原が陽性となります。しかし、その後は感染から6ヶ月ぐらいではHBs抗原は陰性へと変化するのが普通です。
HBVに感染しても、半年以内にウイルスが体から消えてしまう場合がほとんどです。
キャリア
しかし、一部の人では感染から6ヶ月以上経過しても、ウイルスが体から消えないことがあります。
これはウイルスが体(肝臓)に定着してしまった状態で、HBVキャリアと呼ばれます。
そして、キャリアの人が検査を行った場合も、HBs抗原は陽性となります。
陽性なら普通はキャリア
このB型肝炎を調べる検査で陽性だった場合、キャリアの状態で発見されるのが普通です。
これは、40代以降の中高年では、母子感染や幼少期の予防接種によってHBV感染している人のほうが圧倒的に多いからです。
30代以下の若い人では、性行為での感染により急性肝炎を発症した場合には、病院の検査で感染初期であるとわかるかもしれません。
しかし、B型肝炎では急性肝炎を発症しない人も多く、症状のでていない人が検査で陽性だった場合、すでにキャリアになっている人がほとんどと考えられます。
検査する時期
HBs抗原が陽性となるためには、感染してから2~3ヶ月くらいの期間が必要です。最低でも2ヶ月は必要です。
3ヶ月以上経過していれば正しい検査結果を得ることが可能でしょう。
抗体検査
感染する可能性がわかる検査
B型肝炎に感染しているかどうかを調べる検査では、HBs抗原を検査するのが普通です。
しかし、B型肝炎では抗原の検査以外にも、抗体を検査することもあります。
- 抗原 ウイルスそのもの
- 抗体 ウイルスに対して作られる物質
B型肝炎ウイルス(HBV)に感染すると、3ヶ月くらいでHBs抗原が検出されるようになります。
しかし、これが大人の感染であれば、HBs抗原は数ヶ月くらいの短い期間だけ出現した後に消えるのが普通です。そして、ウイルス自体も体内から排出されてしまいます。
この後、HBs抗原と入れ替わって、HBs抗体が出現します。
- HBs抗原 ウイルスが現在も存在する
- HBs抗体 ウイルスが過去に存在していた
HBs抗体は、過去にHBVに感染したことを示す抗体です。また、HBVのワクチンを接種した人でもHBs抗体は陽性となります。
このHBs抗体が陽性の場合、HBVに再感染することはありません。HBs抗体によって、HBVからは守られた状態になっています。
この検査は、HBVのワクチン接種が必要かどうかを調べるときにも行われる検査です。
不特定多数の人と性行為を行う人などは、HBs抗体が存在しているかを調べてみるのもいいでしょう。
検査を受けたほうがいい人
1度は受けておいたほうがいいよ
- これまでにHBV検査を受けたことがない
- 健康診断で肝機能の異常が見つかった
- 家族にHBVキャリアの人がいる
- 家族に肝がんになった人がいた
- 1985年以前に生まれた
- 輸血を受けたことがある
- 入れ墨(タトゥー)を入れている
- 医療機関以外でピアスの穴を開けた
- 薬物で注射の回し打ちを行った
- パートナーがHBVに感染している
- 新しいパートナーができた
- 不特定の人との性行為が多い
B型肝炎ウイルス(HBV)の検査を受けたほうがいいのはこのような人です。
B型肝炎は、過去に母子感染や子供のころの予防接種で感染した人が多いです。
しかし、性病という意味でB型肝炎を考えるなら、新しい交際相手ができた人や風俗関係で働く人、不特定多数の人との性行為が多い人なども1度は検査を考えてみてもいいでしょう。
健康診断での検査
健康診断で検査はしないよ
健康診断では、B型肝炎の検査が行われることは普通はありません。
しかし、健康診断では肝機能も検査するため、検査結果の数値でB型肝炎の疑いがあるかどうかくらいはわかります。
AST(GOT)、ALT(GPT)は40以下ぐらいが正常です。100を超えている場合は肝臓に問題がある可能性があります。
γ-GTPは男性で50以下、女性で30以下ぐらいが正常です。こちらも100を超えるようだと肝臓の異常が考えられます。
数値が正常であればほぼ問題はないと考えられます。
ただ、肝炎になっていてもこれらの数値は変動することがあるため、数値だけをみて肝臓が正常であるということは断定はできません。
また、アルコールなどでも肝臓が痛むため、数値が上昇します。数値に異常がみられる場合でも、原因が何であるかは検査をしてみないとわかりません。
急性肝炎の治療
安静にするだけだよ
B型肝炎ウイルス(HBV)などによって、感染直後に発症するが急性肝炎です。
急性肝炎の治療では通常は薬は使いません。急性肝炎はほとんどが自然治癒してしまうからです。
ただし、症状が重い場合などは点滴で栄養補給を行います。また、黄疸がでているような場合には、通常は入院となります。
それでも、急性肝炎には特別な治療方法というものはほとんどなく、安静に寝ているぐらいしかありません。肝臓に血液が流れるのを促し、肝機能の自然治癒を待ちます。
劇症肝炎
しかし、急性肝炎が非常に重くなる劇症肝炎では、特別な治療が必要となります。劇症肝炎では死に至る確率が非常に高いからです。
抗ウイルス薬の投与、血漿交換、血液透析などの治療を行います。それでもよくならない場合には生体肝臓移植が必要となることもあります。
慢性肝炎の治療
活動を弱めるのが目標
B型肝炎ウイルス(HBV)の感染後、ウイルスが体から抜けなければ、慢性肝炎となることもあります。
慢性肝炎では治療が行われることがありますが、治療を行わずに様子をみることもあります。
自然に肝炎が治まり、肝炎の症状をあらわさない非活動性キャリアに移行することがあるからです。
治療を行う場合は、抗ウイルス薬やインターフェロン、肝庇護薬などが用いられます。肝炎を抑えて肝硬変への移行を阻止し、肝がんを発症しにくくするが目的です。
また、HBVキャリアの人でも体からHBVが完全に消えてしまう可能性があります。HBVが消えてしまえば、健康な人とほとんど変わりません。
しかし、慢性のB型肝炎で治療を行っても、HBVが消えるのは極めてまれです。
予防とワクチン
ワクチンを打てば感染しないよ
大人のB型肝炎ウイルス(HBV)感染は、原因のほとんどすべてが性行為です。このため、予防にはコンドームが非常に有効です。
しかし、HBVは感染力が非常に強いため、オーラルセックスなどでも感染する可能性があります。完全に防ぐことは不可能です。
ワクチン
ただ、B型肝炎にはワクチンが存在しています。
このB型肝炎ワクチンはHBV感染の予防には最も有効な方法です。完全にB型肝炎を予防することが可能になります。
このワクチンは非常に安全性が高く、現在まで30年くらい使われていますが、今までに大きな問題が起こったことはありません。
仕事や旅行、留学などでB型肝炎が蔓延している地域に行く場合や、性風俗で働く女性は打つことが推奨されるワクチンです。
世界的にも標準的なワクチンで、世界の90%以上の国では予防接種として義務付けられ、子供のころに接種しています。
しかし、日本ではB型肝炎の予防接種は子どもがうける予防接種には含まれず、ワクチン接種は個人の判断に任せられています。
接種費用
このワクチンは初回、1ヵ月後、6ヵ月後の3回接種する必要があります。
過去にHBVに感染して抗体ができていることもあるので、ワクチン接種の前に抗体があるかの検査が必要です。もし、抗体ができていた場合は、ワクチン接種は必要ありません。
費用としては1回で5千~8千円ほどなので、3回の接種で1.5~2.5万円ぐらいかかります。保険はきかないので全額負担となります。
副作用
B型肝炎には副作用もありますが、副作用自体は軽いもので数日で回復します。
副作用は接種した人の5%くらいにあらわれます。
有効期限
ワクチンを接種すると、血液中の抗体が陽性となりB型肝炎ウイルスからは守られた状態となります。
その後、個人差がありますが、抗体は数年で陰性となってしまいます。
それでも抗体が陰性化したからといって、ワクチンの予防効果がすぐになくなるというものでもありません。
このワクチンの有効期限については、国や医療関係者の間でも意見がわかれていて、どのくらいの間有効かは詳しくはわかっていません。
それでも、追加接種をしなくても20年ぐらいはワクチンの予防効果があるのではないか、と考えられています。
性病検査キット
自分で検査できるよ
性病検査キットを使うと、自宅で性病検査をすることもできます。
ただ、検査キットは誰にでもオススメできるわけではありません。そのまま病院へいったほうがいい場合もあります。
そして、検査キットにはメリットやデメリットもあります。
性病検査キットの良い点・悪い点のページでは、これらの点について解説していますので、そちらを参考にしてください。