子宮頸がん・ヒトパピローマウイルス 感染経路と発症の原因
子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルスです。
感染経路のほぼすべてが性行為で、主に性器周辺の細胞に感染します。
ただ、ヒトパピローマウイルス感染自体は特に珍しいことではなく、誰でも1度は感染するようなウイルスです。
このページでは子宮頸がんの原因、ヒトパピローマの感染経路について解説します。
ウイルス
ウイルスによるがんだよ
子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルスです。
ヒトパピローマウイルスには100種類以上の種類があり、皮膚にイボをつくるタイプや、性感染症の一つである尖圭コンジローマの原因となるタイプも存在しています。このうち性行為で感染するのは30~40種類ぐらいです。
子宮頸がんを引きおこすタイプのヒトパピローマウイルスは、ハイリスク型といわれていて15種類くらいあります。
その中でも16型と18型のヒトパピローマウイルスが子宮頸がんの原因となることが特に多く、この2つのタイプで子宮頸がんの7割を占めています。
人だけに感染
ヒトパピローマウイルスは「パピローマウイルス」というウイルスの一種です。
動物に感染するタイプの「パピローマウイルス」も存在しています。
しかし、ヒトパピローマウイルスは人間に感染するタイプなので、動物から感染することはありません。
逆にヒトパピローマウイルスが人間から動物に感染することもありません。
がんになるのは1%以下
誰でも感染する
ハイリスク型のヒトパピローマウイルスに感染すると、ごくまれにがん化することがあります。
しかし、原因となるウイルスに感染すること自体のはごく普通のことです。
普通の女性の8割が一生のうちに一度くらいは、どこかでハイリスク型のヒトパピローマウイルスに感染しています。
子宮がん検診で子宮頸部の細胞に異常のない女性でも、10~20%くらいの女性からハイリスク型ヒトパピローマウイルスが見つかるという報告もあります。特に若い女性からはヒトパピローマウイルスがよく見つかります。
誰でも感染するごくありふれたウイルスといえるでしょう。
自然治癒が多い
ただし、もし感染したとしてもヒトパピローマウイルスはほとんどが自然に消滅してしまいます。
ヒトパピローマウイルスが子宮頸部に残るのは感染した人のうちの10%くらいです。
この10%の人では子宮頸部の細胞に異形成という細胞の異常があらわれて、その後がん化することがあります。
しかし、異形成も自然に治ることが多く、子宮頸がんまで進行するのは異形成になった人の数%だけです。
つまり、ヒトパピローマウイルスに感染してもほとんどの人は自然に治ってしまいます。
ヒトパピローマウイルスに感染して子宮頸がんまで進行する女性はハイリスク型ヒトパピローマウイルス持続感染者の0.15%です。
これはヒトパピローマウイルスの持続感染者の発症率なので、単にどこかで感染しただけという状況の発症率(感染することに対する発症率)はもっと低くなるでしょう。
他のガンの原因にも
肛門がんの原因にもなるよ
子宮頸がんの原因となるハイリスク型のヒトパピローマウイルスは、性器の細胞を好んで感染するタイプです。
特に女性の子宮頸部の細胞に対して、感染してがん化しやすいという特徴があります。
しかし、子宮頸部だけに感染するわけではでなく肛門や口、性器周辺にも感染します。女性だけでなく男性にも感染します。
性風俗で働く女性の30%の口の中からヒトパピローマウイルスが見つかったという報告もあります。(ただ、この30%はいろんな型を含むもので、ハイリスク型だけで30%ではありません。)
ハイリスク型のヒトパピローマウイルスは子宮頸がんの原因ですが、肛門がん、膣がん、ペニスのがん、喉のがん、口のがんなどの原因の一つにもなっていると考えられています。
それでも、これらのがんが子宮頸がんほど大きな問題となっていません。これは子宮頸部に比べるとがん化しにくく、実際のがん患者も子宮頸がんほど多くはないからです。
感染経路は性行為
1回のHでも感染するよ
ヒトパピローマウイルスはほぼすべてが性行為による感染です。
セックスをしなければヒトパピローマウイルスによる子宮頸がんになることはないといえます。
逆にいえば一度でも性行為をしたことのある女性なら、誰でも発症する可能性があるウイルスです。
男性経験が少なくても発症する
男性経験の多い女性ではヒトパピローマウイルスに感染する機会が多くなります。
このため、男性経験が豊富な女性ほど子宮頸がんになりやすいです。実際にそのようなデータも存在しています。
しかし、男性経験が少ない女性が子宮頸がんにならないかといえば、決してそのようなことはありません。
経験人数が多い女性では確かに子宮頸がんの発症率は高くなります。特に、体験人数が0人と1人では子宮頸がんの発症率に大きな違いがあります。
ただ、体験人数が2人以上になると子宮頸がんの発症率にそれほど違いはなくなってきます。
例えば体験人数が2人と10人では、発症率にそれほど大きな違いがあるわけではないです。
恐らく体験人数が2人という女性は現在では少ないほうなのでしょう。そのような女性でも体験人数の多い人とあまり変わらないくらいの発症率があるということです。
つまり、子宮頸がんは男性経験が少ないからといって発症しないわけではなく、誰でも同じくらいの発症率がある病気と考えたほうがいいでしょう
性行為以外の感染経路
性行為以外ではほぼ感染しない
ヒトパピローマウイルスは簡単に感染するウイルスです。
どこかで手にウイルスが付着した場合には、その手で性器に触れてうつることも考えられます。
しかし、そのようにして性行為を行わずにハイリスク型のヒトパピローマウイルス感染する可能性極めて低いです。
性行為以外の感染経路はほとんど考えにくいです。
普通の日常生活を送っているだけで感染するようなことはないでしょう。
がんを発症する様々な要因
ウイルスだけではがんにならないよ
子宮頸がんの一番の原因は、ヒトパピローマウイルスが排除されずに長期に渡って持続感染することです。
ただ、ヒトパピローマウイルスがなぜ持続感染し、さらにがんを発症かはよくわかっていません。体質(遺伝子など)や免疫などが関係しているのではないかと考えられています。
また、確かにヒトパピローマウイルスの持続感染が子宮頸がんの一番の原因ですが、ウイルスだけで子宮頸がんを発症することはありません。
発症するには子宮頸がんを発症しやすくする他の要因が必要となります。
- セックスのパートナーが多い
- 初体験の年齢が若い・結婚が早い
- 喫煙
- 妊娠・出産回数が多い
- 免疫力の低下
- ピルの長期使用
- 不潔な性行為
このような女性では子宮頸がんが発症しやすいことがわかっています。
セックスパートナーが多い女性に子宮頸がんが発症しやすいのは、ヒトパピローマウイルスに感染する機会が多いからです。また、パートナーの多い人ではコンドームの使用率が下がることも一つの原因かもしれません。
セックスの初体験の年齢が低い人ほど子宮頸がんを発症しやすいです。これは若い人ほどウイルスが感染する子宮頸部が広いことや、早くから性行為をおこなうと体験人数が多くなり感染しやすいことが原因と考えられます。また、若い人ではコンドームの使用率が低いという可能性もあります。
エイズなどの病気や免疫抑制剤などによって、免疫力が下がっている女性も子宮頸がんを発症しやすくなることがわかっています。
妊娠中にはヒトパピローマウイルスが感染しやすい傾向があります。このため、妊娠・出産回数が多い女性も子宮頸がんになりやすいです。
ピルを5年以上の長期に渡って使用している女性が、子宮頸がんになりやすいこともわかっています。
喫煙者も子宮頸がんを発症しやすいというデータがあります。タバコが体の免疫力を下げることが原因と考えられます。
不潔にしている人もがんを発症しやすいことがわかっています。
子宮頸がんにならないための予防法
コンドーム
コンドームを使用している人はヒトパピローマウイルスに感染しにくいことがわかっています。
コンドームはヒトパピローマウイルスの感染予防には有効です。
それでも、コンドームで感染を完全に防げるわけではありません。
1人のパートナー、禁煙など
性行為を行う相手が増えると感染する機会が増えるため、セックスパートナーを1人だけにすることで感染しにくくなります。
また、喫煙は免疫力が下がり、ヒトパピローマウイルスが体内から排除されにくくなると考えられます。禁煙も予防には効果があります。
あと、詳しいことは不明ですが、シイタケに子宮頸がんの予防効果があるとアメリカの研究者が最近発表しています。シイタケを食べているだけで子宮頸がんを予防できるわけではないとは思いますが、ある程度の予防効果が期待できる可能性もあります。
子宮頸がん検診
最も効果的な子宮頸がんの予防方法は、定期的な子宮頸がん検診です。
2年に1度くらいの検診を行っていれば、ほぼ早期にみつかるため100%治すことができます。
子宮頸がん以上に有効な予防方法は他にはありません。
ワクチン(予防接種)
ワクチンも子宮頸がんの予防には非常に有効です。ただ、重い副作用があるのではないかとも考えられています。
ワクチン接種を行うかどうかはよく考えて慎重に決めたほうがいいでしょう。
性病検査キット
自分で検査できるよ
性病検査キットを使うと、自宅で性病検査をすることもできます。
ただ、検査キットは誰にでもオススメできるわけではありません。そのまま病院へいったほうがいい場合もあります。
そして、検査キットにはメリットやデメリットもあります。
性病検査キットの良い点・悪い点のページでは、これらの点について解説していますので、そちらを参考にしてください。
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