自然治癒することもある細菌性腟炎の症状・原因・治療法(細菌性膣炎)
細菌性腟炎は一般細菌が増えたためにおこる腟炎です。
誰でも持っているような一般細菌が原因なので、自然治癒することもあります。
症状は軽いことが多いですが、臭いにおいの原因となることもあるため、悩んでいる女性も多いです。
このページでは細菌性腟炎の症状や治療法、原因などについて解説します。
細菌性腟炎とは
腟内の細菌が増えるよ
細菌性腟炎とは、普通の細菌が増えたためにおこる腟炎です。
普段から腟の中にいるような一般的な細菌、雑菌が原因です。
カンジダやトリコモナスなど、特定の病原体によっておこる腟炎とは異なり、病原体は一定ではなく人によって様々です。
腟炎とは腟内におこる炎症です。しかし、一般的な細菌は病原性が弱いため、増えても腟内に炎症がおきずに無症状のこともあります。このため、正確には腟炎ではなく腟症(細菌性腟症)と呼ばれています。
誰でも発症する
細菌性腟炎は誰でもなるようなありふれた病気です。
腟炎にはカンジダ腟炎やトリコモナス腟炎などいろいろありますが、割合としてはこの細菌性腟炎になる女性が最も多いです。若い女性の10%以上が細菌性腟炎だと思われます。
妊娠期のホルモンの影響などで妊婦さんでは特に細菌性腟炎になりやすく、20~30%の妊婦さんは細菌性腟炎になります。
また、トリコモナス腟炎では細菌性腟炎を同時に発症すること多いです。
デーデルライン桿菌と細菌
膣を守る体のしくみ
腟内の環境を守っている防御システムには2つあります。
一つは白血球などによる免疫機構で、もう一つがデーデルライン桿菌という乳酸桿菌です。
白血球
生理の無い子どもや50代以降の女性では、腟内に乳酸桿菌がいません。
このため、細菌が増えても乳酸桿菌がないため、白血球が腟内を守っています。
白血球は体を守るために細菌を死滅させますが、同時に白血球も死滅します。
そして、残骸として死滅した白血球が膿となって残るため、オリモノには黄色っぽい膿が混じることになります。
デーデルライン桿菌
これに対して、10代から40代くらいの生理のある女性では乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)が存在します。
乳酸桿菌はグリコーゲンを食べて乳酸を産出し、腟内が酸性になるように調整しています。酸性の腟内は細菌・雑菌が増えにくい良い環境です。
このため、生理のある年代の女性では細菌による腟炎でも膿が混じりません。オリモノも白っぽい灰色のサラサラとしたものになります。
普通このような世代の女性では、腟内にいる菌の大部分(75~95%)は良い菌である乳酸桿菌が占めています。
健康な女性の腟内では、細菌性腟炎のもととなる悪い細菌は少数派です。
しかし、乳酸桿菌はとてもデリケートな菌です。何かの薬を飲んだ際に一時的に死滅してしまうこともあります。
細菌性腟炎の病原体
細菌性腟炎を引き起こす細菌は、大腸菌、腸球菌・ブドウ球菌、連鎖球菌など腟の中などにいる一般的な菌です。
細菌性腟炎では、これらの菌が10~100倍に増殖します。
代表的な菌としてはガードネレラ菌があります。このガードネレラ菌は悪臭のもととなる菌で、増えた場合にはひどい悪臭が発生します。
B群溶連菌(GBS)も細菌性腟炎の代表的な菌です。B群溶連菌も細菌性腟炎の原因にもなりますが、出産時に妊婦さんがこの菌をもっていると、赤ちゃんに後遺症があらわれることが一番の問題となります。
そして、これらの原因菌はもともと腟内にいるような菌であることも多いのですが、腸の中にいる菌が原因であることが多いです。
腸の中にいる菌の場合、排便したときに出てきた菌が何らかの理由により腟内に入りこみ、腟炎をひきおこしたと考えられます。
主な症状
臭いが気になる人が多いよ
細菌性腟炎になっても半数以上の女性は無症状です。
自然治癒することもありますが、治療しなければずっと続くこともあります。
- 魚の生臭いにおい
- 灰白色のオリモノ
- 排尿時にしみる感じ
- 軽いかゆみ
細菌性腟炎の主な症状はこのようなものです。
魚の生臭い臭い
魚のような生臭いにおいは、細菌性腟炎の一番の特徴です。魚臭、アミン臭といわれる強烈な臭いにおいがあります。
においが発生するかどうかは増えた細菌の種類によりますが、細菌性腟炎では悪臭があることが多いです。
生理後やセックスのあとでは細菌が増えるため、特に臭いが強くなります。
灰白色のオリモノ
細菌性腟炎では灰色がかった白色のオリモノとなります。
しかし、オリモノは単に白かったり、少し膿が混ざったように黄色っぽくなることも多いです。
性状としては水のようにさらっとしています。
また、細菌性腟炎だけではオリモノはそれほど増えないため少量です。
痛み・かゆみ
腟内の炎症が強い場合には、排尿時におしっこがしみて痛みがでたり、尿道周辺の違和感を感じることもあります。
また、腟の入り口付近ではかゆみがでることもあります。
検査
細菌性膣炎で行われる検査
- 膣分泌物の性状を確認
- 臭いがあるかを確認
- phの測定
- 顕微鏡検査
- 培養検査
- 薬剤感受性検査
細菌性膣炎の診断ではこのようなことが行われますす。
お医者さんは膣分泌物の性状を確認したり、KOH(水酸化カリウム水溶液)を加えてアミン臭が発生するかを調べたりします。
膣内は通常は酸性なph4~5くらいなので、phを測定して膣内が正常かどうかも調べます。
また、膣分泌物(オリモノ)を染色するなどして細菌を確認する顕微鏡検査も行われます。
そして、膣内細菌を培養してどの菌が多いのかを調べます。しかし、培養しても原因となる菌がはっきりしないことも多いです。
他には、細菌に対してどの薬が効果があるかを調べる薬剤感受性の検査を行うこともたまにあります。
治療方法
膣錠や飲み薬を使った治療だよ
細菌性膣炎には確実な治療方法が存在していないのが現状です。
いろいろな細菌が原因となっておこるため、薬を投与しても増えている菌によっては効果がないこともあるからです。
確実に治す方法はありませんので、なかなか治らないような場合には、様々な薬を試していくこともあります。
実際の治療方法としては、膣錠や飲み薬を使っての治療が一般的です。薬が効けば通常は2~3日で症状は消えます。
ただ、細菌性膣炎は再発が多いため、治療が長期間に及ぶこともあります。
膣洗浄
最初の治療の前には膣洗浄を行います。増えた細菌を洗い流して症状を抑えます。
この膣洗浄を行うのは普通は初回の治療だけです。
膣洗浄を行うと膣内の乳酸桿菌も流れてしまうからです。治療のたびに膣洗浄を行えば、せっかく増えた乳酸桿菌が何度でも消えてしまいます。
クロラムフェニコール
クロラムフェニコール(クロマイ膣錠、ハイセチン膣錠)は細菌性膣炎では一番よく使われる薬です。
細菌性膣炎では唯一保険がきく薬で、これを1週間投与します。
ただ、この薬は臭いのもととなるガードネレラ菌に効果はありますが、同時に乳酸桿菌も殺してしまうという欠点があります。
また、この薬によって乳酸桿菌や細菌がいなくなると、普通の薬が全く効かないカンジダが増えることが多く、かゆみをともなう症状がでることがあります。
メトロニダゾール(フラジール膣錠)
この薬はトリコモナスの治療にも使われる薬で、1週間投与します。
善玉菌である乳酸桿菌には効かないという優れた点があり、ガードネレラ菌にもよく効きます。
しかし、値段の高い薬ではありませんが、細菌性膣炎の場合には保険がきかないという欠点もあります。
このため、あまりよくないのでしょうが、診断名をトリコモナスということにしておいて、メトロニダゾールを処方してくれるお医者さんもいるようです。
メトロニダゾールの飲み薬
細菌性膣炎では膣錠だけでなく、メトロニダゾール(フラジール)の飲み薬も治療に使うことがあります。
膣錠による治療が上手くいかなかった場合などです。
メトロニダゾールの飲み薬の欠点としては全身に作用するため、軽い副作用がでる可能性があります。
また、妊娠初期の女性や妊娠の可能性のある女性は、胎児に影響する可能性があるため、メトロニダゾールの飲み薬は使用できません。
こちらは医薬品の個人輸入代行のオオサカ堂さんのHPです。
このメトロニダゾールについては以下のHPが詳しいので参考にしてください。
その他
その他の治療法としては、クリンダマイシン(ダラシン)、リンコマイシン(リンコシン)といった薬が使われることもあります。
また、細菌性膣炎と診断されても症状の無い人では、治療が必要ないこともあります。
少し菌が増えている程度の状態なら、ほとんどが自然治癒してしまうからです。
細菌性膣炎になる原因
細菌のバランスが崩れるよ
健康な女性では膣内環境が正常に保たれています。
膣内を守る乳酸桿菌とその他の細菌と数的にバランスが取れた状態です。
-
乳酸桿菌 大多数
一般細菌 少数
しかし、何らかの理由によってこのバランスが崩れると細菌性膣炎が発症します。
人から感染することは少ない
細菌性膣炎になった場合、誰かにうつされたと考える人もいるかもしれません。
しかし、原因となる細菌が男性から感染することは少ないです。逆に細菌性膣炎の女性から男性に感染することも少ないです。
同じように、トイレや銭湯・温泉などで外部から細菌に感染することも、普通はありません。
パートナー
新しいパートナーができて性的な環境が変わった人や、普段からパートナーが多い人は細菌性膣炎になりやすいです。
セックスをしすぎると乳酸桿菌が増える余裕がなくなるため、セックスの回数の多い人では特に発症しやすくなります。
また、膣内は酸性なのに対して精子はアルカリ性です。
このため、ピルを使っている女性などでは膣内に入った精子が、細菌性膣炎の原因になる可能性もあります。
ウォシュレット
ウォシュレットのビデ機能や、入浴時のシャワーで膣を洗いすぎるために、細菌性膣炎になる人も多いです。
膣内を洗いすぎると、善玉菌が流れ出し細菌が増えてしまいます。
洗い流してきれいにしているようですが、実は膣内環境を乱しているだけです。
免疫力の低下
疲労・風邪・ストレス・寝不足などにより体力が低下しているときにも、細菌性膣炎は発症しやすくなります。
女性ホルモンの変化
生理の前後や妊娠した女性では、女性ホルモンが変化します。
このため、細菌性膣炎を発症したり、症状が悪化することが多いです。
不衛生な状況
女性器のまわりの不潔な状況も細菌が増えやすい状況をつくりだします。
特にナプキン、おりものシート、タンポンの長時間使用やとり忘れは、膣内環境にとってあまり良くはないです。
喫煙
喫煙している女性では細菌性膣炎になりやすいこともわかっています。
タバコを吸うと血液中の酸素が少なくなり、酸素が必要な乳酸桿菌の働きが弱くなるからです。
避妊リング
子宮にいれて妊娠を避ける器具である避妊リング(IUD)が、細菌性膣炎の原因となることも多いです。
ただ、現在では誰でもピルが使えるため、このような器具を使っている人は少ないでしょう。
抗生物質
何らかの病気になった際に飲んだ薬で、細菌性膣炎になることもあります。
膣炎とは全く関係のない薬(抗生物質)が、膣内の乳酸桿菌を殺してしまうことがあるからです。
その他
他にも不潔なセックスや通気性の悪い下着などが、細菌性膣炎の原因となることもあります。
予防方法
健康的な生活を心がける
細菌性膣炎は治すのは簡単です。
薬がよく効くため、薬を飲めばすぐに症状が治まることが多いからです。
しかし、薬を使っても症状が治まるのは一時的で、予防にはなりません。
いくら薬がよく効くからといって抗生物質に頼りすぎると、今度は乳酸桿菌が再生できない状況が続いてしまいます。
そして、細菌性膣炎は非常に再発しやすいために、何度もくりかえして慢性化したような状態になることもあります。
薬で治療することも大事ですが、膣内の乳酸桿菌が増えやすい環境をつくることが最も大切です。
規則正しい生活
不規則な生活では膣内の乳酸桿菌が減少してしまいます。
睡眠をきちんとり、適度な運動をして免疫力・抵抗力を高めることが予防には大切です。
また、過労やストレスがたまった状態では免疫力が低下するため、悪い細菌も増えやすくなります。
食生活に気を配る
栄養のあるバランスのとれた食生活も大事です。暴飲暴食は避けましょう。
膣内環境と腸環境は関連性があるため、ヨーグルトを食べるなどして腸の働きをよくするのも予防には効果的です。
過度の洗浄は避ける
ウォシュレットのビデ機能やシャワーで膣を洗いすぎないことも大事です。
洗うのは女性器の表面だけにしたほうがいいでしょう。膣の中まで洗う必要はありません。
ただ、不特定多数との性行為を行うような女性では、定期的に膣洗浄などを行ったほうがいい場合もあります。
過度の性行為は避ける
セックスをしすぎると膣環境が落ち着かなくなります。
乳酸桿菌が増えて良い環境を作り出す余裕がなくなってしまいます。
喫煙しない
煙草を吸うことによって膣内の乳酸桿菌の働きも弱くなります。
喫煙している人では、予防のためには禁煙も考えたほうがいいでしょう。
性感染症や早産の原因に
他の性病の原因になることがあるよ
一般細菌が増えると細菌性膣炎になりますが、それだけではおさまらず他の性感染症の原因となることもあります。
細菌性膣炎では乳酸桿菌が減っていて、膣内が守られていない状態です。
このため、HIVやクラミジア、ヘルペスなど、他の性感染症に非常に感染しやすくなります。
また、細菌性膣炎は流産・早産の主な原因でもあります。流産・早産の50~60%は細菌性膣炎によるものです。
妊婦さんが細菌性膣炎になり細菌が子宮にまで入り込むと、絨毛膜羊膜炎がおこります。
絨毛膜や羊膜はお腹の中の赤ちゃんを包んでいる膜です。この膜に細菌が感染し炎症を引き起こします。
絨毛膜羊膜炎になると、子宮の入り口が開いてくるため、早産・流産が発生しやすくなってしまいます。
性病検査キット
自分で検査できるよ
性病検査キットを使うと、自宅で性病検査をすることもできます。
ただ、検査キットは誰にでもオススメできるわけではありません。そのまま病院へいったほうがいい場合もあります。
そして、検査キットにはメリットやデメリットもあります。
性病検査キットの良い点・悪い点のページでは、これらの点について解説していますので、そちらを参考にしてください。
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