HIV/エイズ 初期症状と潜伏期間
「風邪をひいたみたい」「熱がでたけど寝てたらよくなった」
HIVの初期症状は風邪の症状とよく似ています。単なる風邪と思っている人がほとんどです。
このページではHIVの初期症状と潜伏期間からエイズ発症までの流れについての解説します。
HIVとは
エイズのウイルスだよ
HIVとは、いわゆるエイズウイルスのことです。ヒト免疫不全ウイルスという正式名称があります。
HIVに感染しただけではすぐに発症しませんが、5~10年でエイズを発症します。
エイズを発病すると身体を病気から守るシステムが破壊されるので、いろんな病気になって最後は死を迎えます。
かなり免疫力が下がった人では、HIVによってHIV脳症になり命を落とす人もいますが、エイズウイルスだけが原因となって命を落とすような人はほとんどいないでしょう。
1型と2型
このHIVには1型と2型があります。
世界で広がっているHIVのほとんどが1型です。2型は西アフリカの一部を中心に感染が広がっていますが、数としては少数です。進行が遅く、感染力も弱いのが2型の特徴です。効く薬も少し異なります。
現在の日本では2万人ほどのHIV感染者・エイズ患者がいますが、日本でもほとんどが1型です。2型の人は数名だけです。
その日本の2型の患者さんたちの場合、西アフリカで輸血を受けた人や、西アフリカの人と交際していた人などです。日本人から日本人へと2型が感染したという例は今のところはありません。
HIVの起源
HIVの起源はチンパンジーが持っていたサル免疫不全ウイルスだといわれています。そのウイルスが突然変異して人に感染するようになりました。
原因はサルとセックスしたからとか、サルを食べたからとか言う人もいます。本当かどうかは分かりませんが、チンパンジーとの何らかの接触により人に感染するようになったようです。
ちなみに、このHIVはチンパンジーにも感染しますが全くの無害です。HIVはチンパンジーの体内でも増えるのですがエイズを発症しないからです。
また、他の猿や動物だとHIVに感染すらしません。身体に入っても増えることが出来ないからです。
HIVが生きていけるのは人とチンパンジーの身体の中だけです。
1型と2型は出身が異なるよ
チンパンジー由来のHIVは、HIV1型となります。
そして、HIV2型はスーティーマンガベイという猿がもっていたウイルスが突然変異したものです。
つまり、HIV1型とHIV2型は全くの別のルートで人に感染するようになりました。全くの別物だということです。(でも、もっとさかのぼると起源は同じらしいです。)
猫エイズ
現在では、猫エイズというのも確認されています。聞いたことがある人もいるでしょう。猫に感染して人のエイズと同じような症状を起こします。
これもHIVの仲間ですが、人には感染することはありません。
他にも牛のウシ免疫不全ウイルスというのもありますね。
HIV感染 → 潜伏期間 → 発症
HIVはリンパを目指すよ
粘膜や傷口から侵入したHIVは、リンパの流れを目指します。
HIVはリンパや血液の中でしか大量には増殖できないからです。
HIVが粘膜や傷口からリンパにたどり着くまで0日から2週間程度。最大でも1ヶ月くらいと推定されます。
そして、リンパにたどり着いたHIVは増殖を始めることになります。
ただ、HIVはリンパの中に侵入できたとしても増殖に失敗することが多く、むしろほとんどの場合でHIVは増殖に失敗します。
半数以上の人に初期症状が現れる
しかし、HIVが上手く増殖に成功した場合は、HIVはリンパの中で急激に増え始めます。
そして、ウイルスが急激に増えたことにより潜伏期間が終わり、一部の人にHIV感染の初期症状があらわれます。この頃で感染から3~4週間ぐらいです。
ただし、HIVに感染してもこのような初期症状が全くでない人も何割かいます。
免疫によりウイルス急減
初期症状は1~2週間続きます。
しかし、急激に増えたHIVは、抗体などの身体の免疫システムにより攻撃されます。
このため、感染によって急激に増えたHIVですが、今度は急激に数を減らすことになり、初期症状も収まります。
そして、何も症状のでない潜伏期間へと入っていきます。
潜伏期間
初期症状の後、体内のHIVはだんだんと減っていき、感染から6ヶ月くらいで体内のHIVの量は一定のラインで落ち着きます。
普通のウイルスだと免疫の働きにより全滅してしまうものが多いのですが、HIVの場合は完全に消えることはありません。
この潜伏期間は5年~10年くらい続きます。
エイズ発症は突然に
潜伏期間ではHIVと免疫の互角の戦いがずっと続いていくことになります。
この間は、多少風邪を引きやすいなどあるかもしれませんが、表面上は健康体に見えます。
しかし、実際はHIVが優勢でHIVは徐々に数を増やしていくのに対し、身体の免疫は徐々に数を減らしていきます。
そして、ある時この互角の戦いが破綻し、均衡が破れると潜伏期間は終わります。突然にHIVは急激に数を増やしますが、免疫はほとんど全滅状態となってしまいます。
この時、身体の免疫がなくなるので、いろんなウイルスや菌から身体を守れなくなります。
このため、健康な人なら絶対にならないような病気にもなってしまいます。このときをエイズ発症といいます。
初期症状
初期症状がでて病院にいく人が多い
感染の機会から2~3週間で以下のような初期症状があらわれることがあります。
ただし、このような症状が出る人はHIVに感染した人のうちの5~9割ほどで、必ずしも全員に症状がでるわけではありません。
どのくらいの人に初期症状がでるかは正確にはわかっていません。5割の人だけに初期症状がでるという研究者もいれば、9割の人に初期症状がでるという研究者もいます。
エイズをする発症までかなり時間がかかるため、もし何らかの症状がでても、それがHIVの初期症状だったのか確認ができないことも原因の一つでしょう。
症状 | 発生率 |
---|---|
発熱 | 96% |
リンパ節の腫れ | 74% |
咽頭炎 | 70% |
発疹 | 70% |
筋肉痛と関節痛 | 54% |
下痢 | 32% |
頭痛 | 32% |
吐き気、嘔吐 | 27% |
肝臓と脾臓の腫れ | 14% |
体重減少 | 13% |
口腔カンジダ | 12% |
神経症状 | 12% |
初期症状と発生の割合です。
症状がでた場合は表のような初期症状となります。急性hiv感染症といいますが、主な症状は風邪やインフルエンザに似ています。
リンパ節は首筋や脇の下、足の付け根などにあり、ここが腫れることがあります。
発疹は顔、胸、背中などを中心に赤く盛り上がった発疹がでることがあります。手や足にもでることもあります。
脾臓は胃の横側(左手側)のろっ骨の裏にある小さな臓器で、肝臓と一緒に腫れることもあります。
口腔カンジダはカビの一種で、口の中の粘膜に乳白色のコケのような斑点が出ることがあります。
このような初期症状のでる期間は1~2週間程度で、身体の免疫作用が働き始めると初期症状も徐々に収まっていきます。
風邪と区別はつかないよ
HIVの初期症状というのは、ウイルスが体内で急激に増えたことによりおこる現象です。
インフルエンザやウイルス性の風邪でも、ウイルスが体内で増えることによって症状がおこります。
この体内でウイルスが急増することによる症状というのは、HIVでもインフルエンザでも風邪でも全部一緒です。
HIV特有の初期症状というのは多くはありません。発疹がでる点がインフルエンザなどと異なり少し特徴的ですね。
「風邪でもひいたかな」
HIVの初期症状というのは風邪やインフルエンザの症状と全く変わりません。発熱、のどの痛み、咳、頭痛、鼻水、吐き気、だるさ、筋肉痛など。
初期症状からはHIV感染の判断は全くできません。病院でも「風邪ですね」と判断されることが多くなるでしょう。
潜伏期間が短くなっている
進化しているHIV
HIVの潜伏期間には2種類あります。
初期症状までの潜伏期間と、エイズ発症までの潜伏期間です。
エイズ発症までの潜伏期間についてですが、短くなっているのではないかと考えられています。
HIVに感染すると通常は5~10数年を経てエイズを発症します。
しかし2000年以降、HIV感染から5年以内でエイズを発症したという報告が多くなっています。現在のHIVの潜伏期間は3年くらいと考えるのが現実的なようです。
近年のアメリカでは新規感染者の3人に1人は感染から1年以内にエイズを発症しています。アメリカと日本ではエイズ発症の基準が違うためそのまま比較はできないのですが、潜伏期間が世界的に短くなっているのは確かです。
HIVは非常に変異しやすいウイルスなので、病原性の強いタイプに進化したという意見もあります。
それでも、感染した人すべてが3年くらいでエイズを発症するわけではありません。
進行のスピードにはかなりの個人差があるからで、1年以内に発症する人もいれば10年以上経ってから発症する人もいます。どのくらいでエイズを発症するということは一概にはいえません。
ただ、全体として潜伏期間が短い人が増えているということだけは確かです。
性病検査キット
自分で検査できるよ
性病検査キットを使うと、自宅で性病検査をすることもできます。
ただ、検査キットは誰にでもオススメできるわけではありません。そのまま病院へいったほうがいい場合もあります。
そして、検査キットにはメリットやデメリットもあります。
性病検査キットの良い点・悪い点のページでは、これらの点について解説していますので、そちらを参考にしてください。
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